カリスマ添乗員2004年1月20日(火) 磨け!3分間 知的武装■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 第10号 ★★★★★★★★ 「見方が変わる!『超』マーケティング発想法」 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ●発行責任者:アントレプレナー塾 塾長 三丘 大詩 読者数:904名 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【はじめに】☆★☆★☆★☆★☆★――――――――――――――――――― みなさん、こんにちは!一年の計を立てねばと元旦から思いつつ、はや1月 も20日になってしまいました。賢い皆さんはもう今年の大目標を立てました か? さて、以前新聞のベタ記事で価格破壊の旅行業界で発表すると直ぐに満 員御礼になるカリスマ添乗員が関西にいるという記事が心に引っかかっていた。 昨日本屋店頭でそのご本人が書き下ろした本を見つけた。昨晩一気に読んでし まった。面白かった。そこで今日は急遽予定を変更して、カリスマ添乗員を素 材にして、サラリ-マンの仕事について考えてみましょう。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇ 平田進也を知ってますか? ◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆ 商売とは何かを考える 一サラリーマンだが5億円を稼ぎ出すカリスマ添乗員 ◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆ ―――――――――――――――――――――――――――――― ●商売の原点は「商い」(飽きない)にあると学生時代、恩師に教わりました。 その心は、1回限りの商売ではなく、ずっと続く「商い」こそが大事だと言うこ とです。そんなことを思い出せる本でした。(「出る杭も5億稼げば打たれな い! 平田進也著 小学館 952円)まず平田ワールドをご紹介しましょう。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▼平田進也。サラリーマン生活二十三年の、日本旅行の添乗員である。その彼 が企画し添乗員を務めるツアー旅行はいつも満杯となる。中年のオバさんパワ ーや熟年カップル、元気なオバー・オジー、リピーター客やその口コミで定員 オバーとなる。またそのツアー名も面白い。そのものずばり、「平田 進也と 行く ひと味違う ○○ツアー」である。時としてツアーの前に「わがまま」 がつく場合もある。平田進也と行く ひと味違う 北陸わがままツアーなど。 ▼平田ツアーに参加するお客さんは初対面の人でも直ぐに打ち解けて笑顔が絶 えない。そうである。このツアー参加者は、観光名所など行き飽きたベテラン 客が集うのである。その人達は風光明媚な場所を求めて参加するのではない。 平田進也その人と一緒にいる「場」を楽しみにしているのである。平田氏も毎 回、「非日常」を考え抜いたアイデアを盛りこみ、お客との心を開いた交流を 心から楽しんでいるのである。「平田進也と行くシンガポール・ツアー」は、 募集をはじめるとアッという間に六百人が集まってしまったと言う。 ▼北海道で新鮮魚介を食べる趣旨のツアーの移動のバスの中で、お客さんは「 うに、うに、・・かに、かに・・」の大合唱。食事への期待がメチャクチャ高 い。こういう場合は中途半端な満足はかえって不満足につながると言う。だか らこの時は、採算を度外してこれでもかの満足を提供する。うになら一人一箱。 蟹はこれでもかと食べ残すまで出し続ける。要は非日常をプロデュースし120% の満足を追求する。 ▼お医者様の奥様族の大阪ツアーがあった。ハイソな彼女達の「非日常」とは 何かを考えぬく。そうだ。私の日常が彼女達の非日常では?コテコテのなにわ を案内したろ。まず最初にたこ焼き屋台に案内してドロドロソースべったりの 大判たこ焼きを購入する。そして一つづつ楊枝にさして一人一人の口に「あー ん」。一人のザーマス奥様がそんな立ち食いなんて主人に怒られますワと拒否。 「何ゆうてはるんですか?大阪の食文化が凝縮されてますがな・・」「おいし い・・」結局、みんなオホホを辞めて、キョーキャーワイワイとうどん、お好 み焼き、串揚げなど難波の夜に熱中した。 ▼ある時帰りのバスの中で童謡を流したところ、いつのまにか大合唱となりこ んな楽しい旅ははじめてやと涙を流す人まで現れた。そこではじめたのが、「 思い出の修学旅行」。「普通に旅行をしていても面白くないですから今日は、 昔懐かしい修学旅行です」「えっ、それなんや。面白そうやねぇ」さすが乗り のいい関西人。「では今日は6年3組の生徒になってもらいます・・」「ハーイ」 と元気な返事。75歳のご婦人に「菊ちゃん、列からはみ出しているよ」「先生 すいません」58歳の男性に「正太君、おしゃべりはあかんゆうたろ!」いたず らっ子のような顔で「先生、もうしません」てな具合である。「カタチを整え るよりも、まず、心を整える」のがコツなのである。 ▼通常なら退屈する移動時間は特に大事と言う。はじめてのお客さんからあれ これ話を聞いたり、皆を楽しませる企画やしゃべりをする。夜の宴会は彼の独 壇場である。入念に女装して平田進子が登場する。ここでのエンターテナーぶ りは、武者小路君麻呂も真っ青である。そのあと必ず各テーブルを回りお客様 の声をあれこれ聞く。そうすることによって、お客様と添乗員の垣根がとれて 心を開いたお付き合いができるという。 ▼そんな平田も入社9年間はデスクワークが合わず、明日辞めたろの連続だっ た。コンピューターへのデータ入力と不得意なデスクの整理整頓の仕事に馴 染めなかったのである。「もうちょっと、もうちょっとだけなら頑張れる」と 諦めなかった。異動や転勤でチャンスが回ってきた。良き上司との出会いであ る。自分のアイデアをやらせてくれる竹内課長との遭遇。ツーと言えばカーお 互い足りない部分を補った。 ▼へこんでいる時良く読んでいた本は本田宗一郎や盛田昭夫の自伝である。凡 人の自分が直ぐにはなれない。でも「合体ロボット作戦で本田宗一郎を目指せ」 ばいいじゃないかと考えた。欠点だらけの自分にも人に負けない才能がある。 それを生かすために足りない部分を人に補ってもらえばと・・。総務、宣伝、 販売、・・それぞれの部署から信頼できる仲間を見つけ出していった。 ▼「どんなにカッコつけても、サラリーマンは会社のひとつの歯車や。オレは もっと自由で、自分を生かせる仕事がしたいんや!」と言って辞めていった同 僚が数多くいる。しかし、夢を実現したのはほんの一握り。「リストラされな い程度にそこそこやっていればええんや」という先輩もいる。平田に言わせれ ば「そんなサラリーマン人生、オモロないやろ!オモロイことなくて、何が人 生や」と。 ▼組織にいる人間というのは、一部の理解者を除いて、個人の成功を認めたが らないものである。マスコミにも頻繁に出演している彼には今でも社内の嫉妬、 ねたみ、嫉み、があるという。「お前の勝手な行動でもみんなが迷惑している。 そんなことより、ルーチンワークを優先させろ!」と言われた事もある。心が くじけそうになる事もあるが、彼には大きな夢がある。甲子園球場を借りきり 添乗員平田進也のツアーイベントをやること。彼の顧客は現在、6,500人。甲 子園を満杯にするにはあと八倍の顧客を獲得すればいい。 ▼昨年末、一人の馴染み客からこんな電話がかかった。「アンタには毎年えら い世話になっとるから、来年、慰安会をさしてもらうことに決まったからな」 突然のことに何のことかさっぱり分からなかった。「慰安か会って、なんです の?」「だからアンタのやゆうてるやんか」「私の!?」「そうや。いつも世 話になっとるから、みんなでお金を出し合ってやろういうことに決まったんや」 電話を切ったあと、平田の目から涙・・・。添乗員冥利に尽きる涙である。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【 みつおか流料理のツボ 】☆★☆★☆★☆★☆★――――――――――― ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●マーケティング的に言えば、顧客の心を掴んだ魅力的な商品作りと顧客の囲 いこみをうまくやっているケースである。特にリピート客が多く、儲かる仕組 みが出来あがっている。しかし私が何よりも強く感じたのは、平田進也の前向 きなものの考え方と挑戦的な生き方である。多くのことを学ばせてもらった。 ------------------------------------------------------------------ ▼先週、六本木ヒルズのアーク都市塾で宇宙飛行士・毛利衛さんの講演を聴い た。子供の頃からの夢が忘れられず、北海道大学助教授の職を投げ打って宇宙 飛行士に挑戦した。宇宙から地球を眺めて分かったことがある。「必ず挑戦す る『個』がある。成功して今までできなかったことができるようになって、個 が全体のレベルを引き上げる。その連続が最終的には地球全体の連鎖につなが っている。個は一見ばらばらであるが、相対的にすべてとつながっている」と 宇宙観からひるがえって諦めない個人の挑戦の大切さを説いていた。 ▼大組織の中では神輿を担ぐ人が多いので、自分がそんなにやらなくてもとぶ ら下がる人も現れる。得てして会社の批判や批評ばかりする人も多い。そんな 人に限って挑戦は何もしない。しかし平田はそんなサラリーマン人生オモロな いと言いきる。ただ、彼に対する風当たりが強い。「よし、出すぎた杭は打た れない」と前向きにチャレンジする。その原動体験を本文から紹介しよう。 ▼今の平田があるのは、最初の添乗時の大失敗の体験だと言う。挨拶の声はウ ワズル。下調べを充分にしていなかったのもタタリ、失敗、失敗、また失敗の 大安売り。不安になったお客から、「添乗員サンこうや」と教えられる始末。 「ホンマにすんません。今は舞いあがってますが、誠心誠意やります」と心を 切り替えたがその後も失敗の連続。でも、お客様の部屋回りをしたり、スリッ パを揃えたり、お客様の為に一生懸命に小さなことをした。帰りがけにお客様 のリーダー的存在だった尼崎署の署長さんからこう言われた。 ▼「添乗業務としては最悪や。でも客は全部見てるもんやで。アンタが偉かっ たのは、客のために一生懸命やってたことや。添乗はダメだったけれども、気 持としては合格や。ほんま嬉しかったわ。でな、これはアンタに対する、みん なからの気持やからとっときい」手渡されたのは電話を掛けるための沢山の硬 貨だった。辞退する彼にさらにこう付け加えた。「これはみんなの気持なんや。 かえしたらあかん。でな、アンタにひとつだけゆうとく。この先、アンタが何 年添乗員をするかわからんけども、ベテランになってもこのときの気持を忘れ たらあかんで。このときの気持を忘れたら、アンタは旅行業をやめなあかんと、 私は思う」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【今週のみつおかひろしの薀蓄】☆★☆★☆★☆★☆★――――――――― ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●【マーケティング公理4】「マーケティングとは平たく言えば『商い』である」 【マーケティング原理24】「ネットワーク作り(関係性構築)が、明日への 成長の鍵」 ●【今週の一言】 「オモロイことなくて、何が人生や」 「サービス業に就く人間はサービス過剰にならなあかん!」 平田 進也 (『出る杭も5億稼げば打たれない』) 「商品は人間を相手にする。買ってくれる客は人間なのである。人間の心を 理解し、喜怒哀楽を理解し、不満や希望を知らなければ、大衆に受け入れ られる商品を、創造し生産することはできないはずである」 本田 宗一郎(『一日一話』) 「顧客ニーズに敏感であることは・・つねに大切だが、ニーズ自体が変化して いるときは特にそうだ。顧客ニーズというものは景気の悪い時期に変化する 場合が多く、この変化をほかの企業より早く正確に把握することが肝要だ」 マイケル・デル(デルコンピューターCEO) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★☆☆☆☆☆ <<みつおかひろし の編集後記>> ☆☆☆☆☆★ ――――――――――――――――――――――――――――――――― ■■■■お詫び□□□□ ■■■ 三分間で読めるが、五分間以上かかるになってしまいました。面白い ■■ 本だったので、書くのにも力が入ってしまいました。今後、多少三分 ■ を越すかも知れませんが、そこはお許しください。 ところで、あなたの回りの人を見まわしてください。 そしてお友達 にも一声! エッ、まだ読んでないの? 「超・マーケィング発想法」 登録:http://www.mag2.com/m/0000119371.htm ------------------------------------------------------------------- ■【次回予告】 凄い男、あるいは女列伝もいいですな。そっちを次回書こうか?いやいや、 今度こそ、会社再建について、カルロス・ゴーンに劣らない日本人のターン アラウンドの名手を書こうか迷う所です。皆さん教えて!私は次回、何を書 けばいいでしょう? まあ、何がテーマかご期待ください。 ●アントレプレナー塾 塾長 三丘 大詩(みつおか ひろし) http://plaza.rakuten.co.jp/hiroshi777 http://www.h6.dion.ne.jp/~hiroshi3/index.html ---------------------------------------------------------------------- |